コロナ禍以降、訪日外国人旅行者数は徐々に回復し、2024年には過去最高の3,686万9,900人を記録しました。これに伴い、インバウンド消費額も8兆1,395億円に達し、日本経済への寄与も一層大きくなっています。しかし、訪日客の都市部への集中や短期滞在が多い現状から、地方への誘致が課題となっており、地方誘客と長期滞在の促進が求められています。
「ロングストーリーツアー」は、7日間以上の旅程で、観光資源などの地域のコンテンツを一貫したストーリーで結びつけ、訪日外国人に深い体験を提供することで地方における長期滞在の促進を目的としています。例えば、武士道や伝統芸能、災害復興など、日本独自のテーマを通じて、ストーリー形式で体験を提供することで旅行者に新たな学びや感動を与えることが期待されています。
この取り組みは、地域の観光資源を点ではなく線で結びつけることで、訪日外国人の長期滞在を促進し、地方経済の活性化を図ることを目的としています。また、ツアー全体を通じてガイドが同行し、旅行者に一貫した体験を提供することや、「これまで認知されていなかった魅力あるコンテンツ」「複数の地域が組み合わさっている」ことが付加条件として設定されていることも特徴の一つです。
「Experience Manager(EM)」は、ロングストーリーツアーにおいて、ツアー全体のコーディネートや地域との連携を担う重要な役割を果たします。ツアー行程に同行して旅行者の行程・安全を管理し、旅行者が旅全体を通じたストーリーを感じるために、手助けを行います。地域の観光資源を深く理解し、訪日外国人に対して魅力的な体験を提供するためのストーリーを構築します。
また、EMは、地域の関係者と連携し、ツアーの品質向上や新たなコンテンツの開発にも貢献します。観光庁は、彼らの育成を支援するための研修プログラムを実施し、地域の観光人材の強化を図っています。
ロングストーリーツアーの具体例として、以下のようなテーマがあります。
これらのツアーは、訪日外国人にとって新鮮で魅力的な体験を提供し、地方への誘客と長期滞在の促進に寄与しています。
観光業者や自治体がロングストーリーツアーを活用するためには、以下のような対応が求められます。
これらの取り組みにより、地域の魅力を最大限に活かし、訪日外国人の満足度を高めることができます。
訪日外国人の増加とともに、インバウンド戦略は量から質への転換が求められています。ロングストーリーツアーは、訪日外国人に対して日本での深い体験を提供し、地方経済の活性化に寄与する新たな観光モデルです。この取り組みにより、地域の観光資源が再評価され、持続可能な観光の実現が期待されています。
また、訪日外国人との交流を通じて、地域住民の国際理解が深まり、地域社会の活性化にもつながります。今後、ロングストーリーツアーを通じた地域の魅力発信が、インバウンド戦略の重要な柱となるでしょう。観光業者や自治体は、地域の魅力を再発見し、訪日外国人に対して魅力的な体験を提供することで、地方経済の活性化と持続可能な観光の実現を目指すことができます。今後のインバウンド戦略において、ロングストーリーツアーの活用が重要な鍵となるでしょう。