欧米人材の採用で見落としがちな5つのポイント

Written by
Story Agency編集部
Published on
August 5, 2025

欧米人材の採用に関心を持つ企業が増えている一方で、「なかなか定着しない」「思ったように戦力化できない」といった声も少なくありません。その背景には、採用活動の中で“見落とされがち”なポイントがいくつか存在します。実際に、日本学生支援機構が実施した「2023年度外国人留学生進路状況調査」によると、2023年4月1日から2024年3月31日までに卒業・修了した外国人留学生のうち、国内で就職した割合はアジア出身者が約4割だったのに対し、オセアニア・北米・欧州出身者は約3割にとどまっています。

出所:(独)日本学生支援機構「2023(令和5)年度 外国人留学生進路状況調査結果」より作成

これは、欧米出身の外国人材が日本で就職するうえで、アジア出身者に比べてやや高いハードルを感じていることを示していると言えるでしょう。つまり、文化や価値観の違いを含めた“採用・定着の難しさ”が、企業側にも求職者側にも存在していると考えられます。企業側にとっても、言語やスキルだけでなく、文化的な価値観やコミュニケーションの違いへの理解と対応が、より一層求められているのが見えてきます。

本コラムでは、Story Agencyが多くの欧米人材と企業とのマッチングを支援してきた経験をもとに、欧米人材を採用・定着させるうえで見逃されやすい5つのポイントについて詳しく解説します。

ポイント①:語学力だけで判断してしまう

日本企業が欧米人材を採用する際、最初に気にするのが「日本語が話せるかどうか」です。確かに、ある程度の語学力は業務に必要かもしれませんが、「語学力がある=仕事ができる」とは限りません。欧米出身の候補者の中には、実務能力が非常に高く、業界の知見も豊富なのに、語学面で不利というだけで採用を見送られてしまうケースがあります。一方で、N2やN1を持っていても、実際のビジネス現場でのやりとりに苦戦する人もいるのが現実です。語学力は「判断材料のひとつ」であり、「唯一の基準」ではありません。実務での成果や人柄、学ぶ姿勢なども含めて、総合的に評価する視点が重要です。特に、英語を使う業務や、海外展開・インバウンド対応に関わるポジションでは、語学力よりもコミュニケーション能力や柔軟な対応力の方が求められることも多いです。

ポイント②:欧米のキャリア観への理解不足

欧米出身の人材が日本で働く際に重視するのは、安定した給与があることはもちろんですが、それだけではありません。「その仕事が自分の成長につながるか」「どれだけ主体的に裁量を持って働けるか」そして「自分の持っているスキルをどう活かせるか」といった、将来を見据えた“キャリア志向”の要素が大きな判断材料になります。日本ではまだ「年功序列」や「空気を読む」といった文化が根強く残っていますが、欧米では「成果主義」「自分の意見を持つこと」が当たり前。これを知らずに採用してしまうと、入社後にミスマッチが起こりやすくなります。また、近年は日本でも少しずつ考え方が変わりつつありますが、「長く勤めて一人前になる」という文化は依然として根強く残っています。一方、欧米では「数年ごとに転職しながらキャリアアップを図る」のが一般的です。こうした背景から、「3年で辞めるのは早すぎる」と考える日本企業と、「次のステップへ進むのは自然な流れ」と捉える欧米人材との間に、価値観のギャップが生まれやすいのです。採用時には、欧米人材のキャリア観や働き方の価値観を丁寧にヒアリングし、それに合った業務設計やキャリアパスを提示することが、定着やモチベーション維持に繋がります。

ポイント③:文化的価値観や働き方への理解不足

欧米と日本では、働き方や仕事に対する価値観に大きな違いがあります。例えば、欧米では「ワークライフバランス」を重視し、家族との時間やプライベートを大切にするために、できるだけ残業や休日出勤を避けるという考え方が一般的です。ただし、欧米でもキャリア志向が強く、成果を出している人の中には、残業や休日にも時間をかけて働くケースも見られます。一方、日本では「忙しく働くこと=努力の証」といった価値観が今も根強く残っており、長時間働くことが評価されやすい傾向にあります。
また、「上司=指示する人」「部下=従う人」という上下関係に対しても、欧米人材はフラットな関係を好む傾向があります。そのため、指示を待つのではなく、自ら提案し行動するスタイルの人が多く、日本人がそれを「生意気」と捉えてしまうと、誤解が生まれやすくなります。また、日本特有の「察する文化」や「あいまいな指示」は、欧米に限らず多くの外国人にとって理解しづらいものです。明確な指示やゴール設定、オープンなコミュニケーションが求められます。
こうした文化的な違いを、企業と欧米人材の双方が理解し合える場を設けること、そしてお互いの「多様な働き方」を尊重し合える環境を整えることが、欧米人材の力を最大限に引き出すカギとなります。

ポイント④:採用後のフォローアップが不十分

採用後のフォローアップが不十分だと、せっかくの欧米人材も早期離職につながる可能性があります。特に、入社直後のオンボーディングや業務指導が曖昧なままだと、「自分の役割がよく分からない」「単調な仕事ばかりでスキルを活かせない」「成果が出せていない」と感じ、不満や孤独を抱えやすくなります。欧米では、「何を期待されているのか」「どのような成果を求められているのか」が明確であることが前提です。そのため、業務の背景や目的をしっかり共有することが欠かせません。また、定期的な1on1やフィードバックの時間を設けることで、成長や悩みを共有しやすくなり、問題の早期発見・対処につながります。それだけでなく、信頼関係の構築にも効果的です。さらに、仕事面だけでなく、住居や生活ルール、日本の制度など、生活面でのサポートも重要です。特に日本での暮らしが初めての外国人にとって、不安を感じることは少なくありません。入社後の生活面も含めたサポート体制を整えることが、長期的な定着につながります。

ポイント⑤:育成・マネジメントのスタイルが合っていない

日本企業では「見て学ばせる」「言わなくても気づく」といった育成スタイルが根付いていますが、この方法は欧米出身の人材には必ずしも通用しません。欧米では「明確なゴールと計画に基づいて動く」ことが一般的であるため、丁寧で具体的な指導やフィードバックが求められます。効果的なフィードバックでは、「何が良かったのか」「次にどう改善すればよいか」を双方で話し合うことが重要です。さらに、指導に加え、欧米人材が自身の強みを活かせる業務を任せることや、成果を公正に評価する仕組みを整えることも大切なポイントです。
マネジメント手法を一方的に押しつけるのではなく、「どうすれば互いに働きやすくなるか」を話し合いながら関係を築いていく姿勢が、欧米人材との信頼関係構築につながります。

多様性を力に変えるために

欧米人材の採用は、単に人手を増やすためだけでなく、企業の成長や変革を後押しする大きなチャンスでもあります。しかし、その可能性を十分に引き出すためには、語学力だけに頼るのではなく、文化や価値観、働き方の違いに丁寧に向き合う姿勢が欠かせません。今回ご紹介した5つのポイントは、いずれも見落とされがちですが、採用と定着の成否を左右する非常に重要な視点です。欧米人材の強みを最大限に活かすために、採用前後のコミュニケーションや制度設計を見直し、多様性を力に変えていくための第一歩として、ぜひ参考にしてみてください。

Story Agencyでは、企業と欧米を中心とした優秀な人材とのマッチングやインターンシップ導入支援を行っています。初めての外国人採用でも安心して進められるよう、丁寧なサポート体制を整えています。ご興味のある方は、お気軽にご連絡ください!

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