欧米からのインターンの受け入れは、企業と外国人学生間の就職活動でのミスマッチを防ぐだけでなく、自社に新しい視点を取り入れ、社員の語学力やモチベーションを高める貴重な機会です。さらに日本企業にとっては、将来的な国際人材の採用や組織の多様性向上にもつながります。
しかし、準備不足で受け入れを進めると、法的トラブルや業務混乱、期待値の不一致が発生するリスクがあります。
本コラムでは、実務的観点を意識し、受入前に確認すべき5つのチェックポイントを解説します。
外国人のインターンの受け入れにおいて最も基本かつ重要なのが、在留資格と契約条件の確認です。
日本の大学に留学しているのか、それとも海外の大学に在籍しているのか、活動内容・期間や報酬に応じて適切な在留資格が必要です。例えば、日本の大学に在籍している外国人留学生の場合、「留学」の在留資格では就労が許可されていないため、報酬が発生する場合は、本人が「資格外活動許可」を取得する必要があります。
過去には、学生が有給条件で来日する予定でしたが、契約書に明記がなかったため、法的手続きが遅れ、渡航が延期になったケースもあります。そのため、事前に確認を行いましょう。
チェックポイント:
インターンの成果を最大化するには、業務範囲・役割を明確に設計することが必要です。
欧米インターンは自律的に動く傾向があるため、曖昧な指示は混乱を招きます。具体的には、KPIや成果物を設定したうえで業務範囲を文書化しておくことが重要です。こうした明文化により、期待値のズレを防ぎ、インターンも安心して業務に集中できます。
例えば、インターンにマーケティングリサーチを任せる場合、業務開始前に以下を整理・共有しておくことが効果的です。
例:マーケティングリサーチを任せる場合
受け入れの成功には、日常的な相談先の明確化が欠かせません。
欧米インターンは積極的に質問する文化が根付いていますが、日本の企業文化では遠慮しがちになることもあります。また、担当者不在だと業務が滞る原因にもなります。
効果的な運用例として:
これにより、インターンは孤立せず、学習と成果の両立が可能になります。
欧米インターンの多くはデジタルツール中心のコミュニケーションに慣れており、オンライン授業やリモートプロジェクトを通じた協働経験も豊富です。そのため、デジタル環境での業務にスムーズに適応できます。受け入れ企業側は、事前に自社で使用しているツールやインターンが使用可能なツールを共有しておくことで、コミュニケーションの効率を高めることができます。
これらを事前に共有し、社内での情報フローを設計しておくことで、業務効率が格段に向上します。また、欧米インターンは自己報告型で動く傾向が強いため、報告・相談のルールを可視化することが、期待値調整に直結します。
また、D社では、Slackでのチャットルールを事前に共有したことで、質問が増え、作業スピードが1.5倍になりました。
最後に、文化や働き方の違いを理解しておくことが重要です。
欧米インターンは「指示待ちではなく自主提案型」が多い傾向にありますが、文化の異なる日本でのインターンシップということもあり、日本企業の一斉行動や暗黙ルールに馴染めない場合もあります。残業や報告スタイルの考え方も異なるため、組織心理学的視点でギャップを予測しておくとトラブルを回避できます。
オリエンテーション例:
組織心理学的視点:
こうした働きかけがあると、文化差を活かした創造的な仕事が生まれやすくなります。
ここまで、欧米インターン受け入れ前に確認すべき5つのポイントを整理しました。
これらのチェックを事前に行うことで、受け入れ企業・学生双方にとって実りあるインターンにできます。あなたの会社では、欧米インターン受け入れに向けてどのような準備を進めていますか?ぜひ一度、社内の体制を振り返り、次の受け入れ計画に役立ててみてはいかがでしょうか。