
現在、日本社会では「外国人をより受け入れるべきか、それとも慎重にすべきか」という議論が盛んに行われています。人材不足の解消のために外国人雇用を進めるべきだという声もある一方で、文化や言語の違い、一部で懸念される治安面などから「うまくいかないのでは」と慎重な意見も聞かれます。
現実には、日本の労働力人口は減少の一途をたどっており、すでに多くの産業では外国人材なしで事業を回すことが難しくなっています。帝国データバンクの調査(2025年8月実施)によると、回答企業1万701社のうち、24.7%が外国人材をすでに雇用しています。また、今後の採用については、現在雇用中の企業で採用を増やす意向は3.1%、新規に採用する企業は11.2%で、合計14.3%の企業が外国人材の採用開始や拡大を検討していることがわかりました。これらの数字から、外国人材の活用は一部の企業だけの取り組みにとどまらず、日本全体の課題解決の一つとして広がっていることが明らかです。
特に最近では、テック企業において高度な外国人材がイノベーションを支える存在となっています。メルカリ、マネーフォワード、楽天などの企業は、外国人材の専門性や多様な視点を経営やサービスに取り入れることで、グローバル市場での競争力を高めています。このように、外国人材は企業の成長戦略やイノベーションを支える重要な役割を果たしています。

外国人材が日本で働くためには、まず日本のルールや文化、社会的マナーを理解することが重要です。日本の文化や職場の常識は海外から見ると独特であり、何も知らなければ誤解や摩擦が生じることがあります。例えば、ビジネスでは挨拶から報連相(報告・連絡・相談)の習慣、時間厳守の感覚、上下関係の捉え方、職場でのコミュニケーションの取り方、日常生活では、ゴミの分別ルールや公共交通機関でのマナー、近隣住民との付き合い方、買い物や食事の際の礼儀などがあります。これらは一見小さなことに見えますが、日常の些細な違いが積み重なることで、職場での信頼関係や生活の快適さにも大きく影響します。まずは、こうした違いを理解する姿勢が不可欠です。
帝国データバンクの調査によると、外国人雇用における課題として「教育(語学・スキル)」が55.8%、「コミュニケーション」が55.7%と、過半数の企業が指摘しています。多くの企業は、「どう伝えればよいかわからない」「意思疎通がうまくいかない」といった壁に直面しているのです。
そのため、外国人材には日本語や文化を学ぶ意欲や、日本人とのコミュニケーションに積極的に参加する姿勢が求められます。日本の企業で働き、生活していく上で、日本語を使う意欲が全くない、文化に興味がない場合、適応や活躍が非常に難しくなるでしょう。日本では、単に仕事をこなすだけでなく、周囲と協力しながら働くことで、日本での長期的な活躍につながります。外国人材にとってこうした努力は、日本の職場文化に馴染むだけでなく、異文化に触れる経験が視野を広げる学びの機会にもなります。柔軟な思考や多様性への理解を深めることは、仕事の成果や人間関係の向上にもつながります。
では、日本人や企業側にはどのような姿勢が求められるのでしょうか。ここで重要なのは、相手の文化や背景を理解する姿勢です。ここは日本だからと、日本人の常識を一方的に押し付けるのではなく、「なぜそれが守られないのか」を立ち止まって考えることも大切です。たとえば、宗教上の理由があるのか、日本のマナーを知らないのか、あるいは食事や休日の文化的な違いによるのかもしれません。その背景を知るだけでも、対応や受け入れ方は大きく変わります。また、外国人が「誰に相談したらよいかわからない」と悩むケースもよく見られます。そのため、職場や日常生活での相談先を明確にしておくことも非常に重要です。さらに、社内での異文化理解研修や、外国人材をサポートする仕組みづくりを取り入れることも有効です。こうした取り組みは、単に外国人材のためだけではなく、結果として強い組織づくりにつながり、企業のブランディングやCSR活動にも寄与します。
インターンシップは、企業も外国人材も「トライアル」として関わることができる仕組みです。お互いを理解する過程で、企業は外国人材の受け入れに関するノウハウを蓄積でき、外国人材との関係を構築できます。また、将来的な採用判断や企業ブランディングの強化にもつながる非常に有効な手段です。
企業側のメリット
・採用リスクの軽減
インターンシップ期間中に外国人材の適性や職場との相性を事前に確認できるため、ミスマッチのリスクを抑えられます。
・文化やルールの伝え方を検証できる
実際の業務を通じて、日本に興味を持っている外国人学生に日本のビジネスマナーや企業文化を伝える経験が得られます。このプロセスにより、社内での異文化理解が深まり、社員同士のコミュニケーション力や教育力の向上にもつながります。結果として、外国人材との協働がスムーズになり、組織全体の生産性向上にも貢献します。
・組織の課題発見や改善につながる
インターンシップの視点から、業務フローや社内コミュニケーションの改善点が見えることもあります。新しい発想や多様な考え方を取り入れるきっかけとして活用できます。
外国人インターン側のメリット
・日本の働き方や職場文化を体験できる
実際の業務を通して、日本の職場文化や働き方を体験できるだけでなく、自分のスキルや適性に合った職場かどうかを確かめることができます。
・日本語力・コミュニケーション力を実践的に向上できる
日常業務やチームでのやり取りを通じて、日本語やコミュニケーション能力を実践的に磨くことができます。
・企業や業界理解を深め、将来のキャリアに活かせる
企業や業界の実態を体験的に理解することで、将来のキャリア形成や就職活動に役立つ経験を得られます。
インターンシップは、双方にとってリスクの少ない形で交流ができる就業体験の場です。企業は外国人材との協働や社内の異文化理解を深める機会として、インターンは日本の働き方や職場文化を体験する機会として、それぞれ有効に活用できます。
Story Agencyでは、欧米のインターンと企業のマッチングから、滞在先やビザのサポート、学生へのオリエンテーションの実施、業務や生活面でのメンター制度まで、受け入れ環境の整備をサポートしています。こうした仕組みにより、企業もインターンも安心してインターンシップができる体制を整えています。
日本の職場では、外国人材を労働力としてだけでなく、新しい視点や価値観をもたらす存在として受け入れる重要性が高まっています。外国人材が学ぶ姿勢を持ち、企業側が文化や常識の違いを丁寧に伝えることで、職場の相互理解は深まります。その第一歩として有効なのがインターンシップです。低リスクで始められ、実際に働く体験を通してお互いを理解する経験は、将来的な雇用や長期的な共生に向けた土台を築きます。企業は外国人材との協働や社内の異文化理解を深める機会として、インターンは日本の働き方や職場文化を体験する場として、それぞれ活用できます。外国人材と日本人材が互いに学び合い、支え合いながら働く環境を整えることは、これからの日本企業に求められる姿勢でもあります。近い将来、外国人インターンシップは、共生社会の実現に向けた第一歩であり、企業の成長やイノベーションの鍵となるでしょう。